月夜の翡翠と貴方


私は、真実を伝える。

無知なこの女の子に。

無慈悲にも、伝える。

真実を。


「…この村の、民からです」


セルシアは、目を見開いた。

予想していなかったのだろう。

私は構わず話を続ける。

ルトは横で、静かに成り行きを見つめていた。


「…貴女のその召しものを買うために、どのくらいのお金を使ったと思いますか?」


「………………」


セルシアが、自分の姿を見つめる。


「貴女が今健康に生きているために、どのくらいの民が苦労をしたと思いますか」


その美しい顔に、戸惑いが見えた。

ひそめられた眉と、きつく結ばれた綺麗な薄桃の唇。

華奢な身体が、わずかに震えた。

「………ったわ…」

「…貴女が、結婚から逃げるために持ちだす金のために、どれくらいの民が命を絶ったとお思いですか」

「わかったわ!!」


叫んだその顔は、今にも泣き出しそうなほどに歪んでいた。

…少し、厳しかっただろうか。

何も知らないからこそ、伝えられた真実も彼女の心にそのまま入る。


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