月夜の翡翠と貴方
「そんなこと、できるのですか…?」
「ノワードに事情を話せば、召し使いの服なんてすぐに用意出来ます。どうか、お願いできませんか」
「………………」
夜会に…でる。
召し使いとして…だが、やはりその場に立つだけで、私はまたあの頃のことを思い出してしまうのではないか。
正直もう、あのきらびやかな世界には、関わりたくない。
私には、汚れた裏の世界が似合っている。
「……やはり、無理ですか?」
セルシアが、なかなか返事を返さない私を、不安そうに見ている。
「……無理…というか………」
無意識に手のひらを握りしめたとき、突然肩に手が置かれた。
「俺も参加していいか?」
ルト……………?
「俺は訳あって、ジェイドからあまり離れられないんだ。召し使いでもなんでもするから、近くにいさせて欲しい」
セルシアは少しばかり頬を朱に染めて、「も、もちろんです」と言った。
「そちらが宜しいのであれば…こちらは願ってもありません」
ルトも参加する、なんて。
確かに、少なからずルトも、貴族に関わりのある人間だ。
こういうのは、はじめてではないのかもしれないが……