月夜の翡翠と貴方


きっと明日の夜は、私にとって大事なときになる。

ルトが隣にいてくれれば、きっと大丈夫。

そう信じて。

心のなかで、ごめんね、と呟く。

いずれ私を捨てて行く、隣の主人へ。


今だけ、私のご主人様。

今だけ、私は貴方のものに。


隣で明るく笑う貴方を、信じたい。






ノワードに事情を話すと、彼は快く邸の一室を用意してくれた。

「今日の夜と明日は、どうぞこの部屋を使ってくださいな」

セルシアが微笑んで、扉を開ける。

そこは、あまり家具の装飾の少ない簡素な部屋だった。

ルトがノワードに、豪華な部屋は遠慮したい、といったのだ。


「しかし…ずっと駄々をこねてらっしゃった婚約を、突然承諾されるなんて…一体どうやって説得してくださったのですか」

ノワードが、不思議そうに私たちを見つめる。

私は苦笑いをして、「少しお話をしただけですよ」と言った。

ノワードはそれ以上は何も訊いてこず、「その気にしてくださりありがとうございました」と、笑顔で去って行った。



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