月夜の翡翠と貴方


「全く…駄々をこねていた、なんて、失礼ねぇ」

そう唇を尖らせたあと、セルシアも微笑んで去って行った。





「……どこまで、わかってる?」


ルトが手紙を書いている。

きっと、依頼主へ。

訊くと、ルトは顔を上げずに返事をした。

「なにが?」

その手が、止まっては進み、止まっては進み、ペンを走らせる。

今回のは、なんだか長文らしい。


私は寝台から起き上がりながら、小さな声を出した。

「…私の…こと。どこまでわかってる?」

わかっているくせに、『なにが?』なんて訊かないでほしい。

ルトはペンを持つ手を止めると、顔を上げた。


「なに。話してくれる気になった?」


ルトの口元には笑みが浮かんでいて、私は唇を尖らせた。

「…ルトが、どこまでわかってるかによる」

そう言うと、ルトはフ、と笑った。


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