月夜の翡翠と貴方
「全く…駄々をこねていた、なんて、失礼ねぇ」
そう唇を尖らせたあと、セルシアも微笑んで去って行った。
*
「……どこまで、わかってる?」
ルトが手紙を書いている。
きっと、依頼主へ。
訊くと、ルトは顔を上げずに返事をした。
「なにが?」
その手が、止まっては進み、止まっては進み、ペンを走らせる。
今回のは、なんだか長文らしい。
私は寝台から起き上がりながら、小さな声を出した。
「…私の…こと。どこまでわかってる?」
わかっているくせに、『なにが?』なんて訊かないでほしい。
ルトはペンを持つ手を止めると、顔を上げた。
「なに。話してくれる気になった?」
ルトの口元には笑みが浮かんでいて、私は唇を尖らせた。
「…ルトが、どこまでわかってるかによる」
そう言うと、ルトはフ、と笑った。