月夜の翡翠と貴方
ナタナの目は暗く、それでいて恐ろしく光っていた。
さらに口元には、不気味に笑みが浮かんでいて。
父親は、見たことのないほど、怯えた顔をして、青ざめていた。
母親は、父親にしがみついて、泣いている。
……なに?
何が起こってるの。
『…お嬢様!部屋から出て下さい!』
後ろから執事の声がしたが、耳に入らない。
足を動かせないでいる私を、執事が部屋から出そうとしたとき、ナタナがこちらを向いた。
『……これはこれは、マリア嬢』
そんな言葉と共に、不気味な笑みをして、私を見つめる。
怯んだ執事が、思わず私の腕をつかむ手を離した。
『…おいで、マリア』
鳥肌が立つ。
揺らぐ視界の隅で、母親が、今にも悲鳴を出しそうな顔でこちらを見ている。