月夜の翡翠と貴方

お父様………?

なにをいっているの。

後ろで執事が、手を震わせていた。

母親も、震えていた。


恐ろしいナタナに、狂ってしまった父親に、皆が怯えていた。


ナタナは私を見ると、目を細めた。


『…いいだろう…哀れな娘よ。私が買ってやろう』


ただただ、目を見開くことしかできない。

『私が、飽きるまで愛でてやる。その碧色の髪を、撫でてやろう』

とうとう足に力が入らなくなって、私は膝をついた。

なに………?

どうして、お父様。


ナタナは父親を見て、愉快そうに笑う。


『あなたのその狂い方、私は嫌いじゃないよ。娘に免じて、命はとらないでやろう』


この言葉で、理解した。

私は、売られたのだ。

父親に。



< 466 / 710 >

この作品をシェア

pagetop