月夜の翡翠と貴方
ナタナは私の後ろへ目を向ける。
『使用人達のいく宛も、しっかり用意してやるから、安心しなさい』
執事が、嗚咽を漏らして泣いているのが、聞こえた。
召し使いの女の、声を殺した泣き声が、耳に響く。
私は不思議と泣けなかった。
もう、泣く気力さえなかった。
両親に目を向けると、ぱっとそらされた。
捨てた娘に、今更罪悪感など感じるのか。
そう冷静に、心で呟いている自分がいた。
ナタナが、私を呼んだ。
彼と数人の男達が、書斎を出ようとする。
使用人達は、さっと道を開けた。
ナタナの手が、呆然としている私の手をつかむ。
『マリア。貴女はこれから、私の奴隷だ』
そう言って、彼は薄く笑う。