月夜の翡翠と貴方
皮肉、夜会、十八の『私』
話を終えたあとの部屋のなかは、しんと静まり返っていた。
ルトは、なにも言わずに話を聞いてくれていた。
「……捨てられたの。私。親に」
ちらりと隣のルトの横顔を見るが、彼はなにも言わない。
「…皮肉だよね…マリア、なんて名前つけて、売っちゃうなんて」
はは、と乾いた笑みが出る。
「…………………」
それでも彼は、なにも言わない。
....ごめんね、ルト。
なにを言ったらいいか、わからないよね。
そもそも、こんな生い立ちを話されて、困るのはルトのほうだ。
私だって、どうしてルトに話しているのか、今になって冷静に考えている。
けれど、話さなければいけないと思った。
怪我させてしまったから?
巻き込んでしまったから?
どれも違う気がした。
それはすべて口実で、本音はただ、ルトに聞いて欲しかったんじゃないのか。
自分に問いかけて、けれど答えは出したくない。