月夜の翡翠と貴方
その答えを出すことは、自分への甘えのように感じた。
「…………ルト?」
しかし、一向に返事がない。
「…聞いてた?」
念のため、そう尋ねてみる。
「…聞いてたよ」
すると、少しだけ低い声が返ってきた。
「本当に?寝てたんじゃない」
「寝てねぇよ。つか、笑うな」
ルトが、ふに、と緩んだ私の頬を摘まむ。
「はは…」
悲しむような顔をするのは、嫌だった。
暗い顔をするのも、癪だった。
けれど、乾いた笑いしか出てこなくて。
この息のくるしさを紛らわしたいのに、笑うのが苦手な私は、上手く紛らわすことができない。
「…大丈夫か」
ルトの深緑が、私を捉える。
「……………ん」
笑うのをやめて、いつもの仏頂面で返事をすると、ルトは小さく笑った。
「話してくれて、ありがと」
愛おしい笑顔。
奴隷に礼を言う主人なんて、聞いたことがない。
奴隷に優しく笑いかける主人なんて、見たことがない。
けれど、それがルト。
私の、主人。