月夜の翡翠と貴方
青年はため息をつき、テントの入口に立つ店主へ向き直った。
「……店主。ここの子はこれで全部?」
これも、もう何度も言った言葉である。
大体は、期待とは逆の答えで返ってくるのだが。
店主は少し考える素ぶりを見せた後、口を開いた。
答えは、想像とは違うものだった。
「いいえ。このテントの裏の井戸に、ひとり水を汲みに行っている娘がおります」
店主の言葉に、青年は小さく目を見開いた。
そして、一抹の期待を抱いて、口を開く。
「その娘っていうのは…どのぐらいの年?俺と同じぐらい?」
「そうですね」
「会いに行ってもいいか?」
「…どうぞ」
その言葉とほぼ同時に、青年はテントをでた。
裏へ周り、井戸を探す。