月夜の翡翠と貴方


青年はため息をつき、テントの入口に立つ店主へ向き直った。


「……店主。ここの子はこれで全部?」


これも、もう何度も言った言葉である。

大体は、期待とは逆の答えで返ってくるのだが。

店主は少し考える素ぶりを見せた後、口を開いた。

答えは、想像とは違うものだった。

「いいえ。このテントの裏の井戸に、ひとり水を汲みに行っている娘がおります」

店主の言葉に、青年は小さく目を見開いた。

そして、一抹の期待を抱いて、口を開く。


「その娘っていうのは…どのぐらいの年?俺と同じぐらい?」


「そうですね」


「会いに行ってもいいか?」


「…どうぞ」


その言葉とほぼ同時に、青年はテントをでた。

裏へ周り、井戸を探す。

< 5 / 710 >

この作品をシェア

pagetop