月夜の翡翠と貴方
大体の主人は、私の外見しか見ていなかったから、それ重視の奴隷に清潔感は欠かせないらしく、毎日のように風呂へ入らされた。
しかし奴隷屋にいると、そうはいかなくなるのだ。
雨が降ったら服を脱いで、自分で体を洗う、それが、奴隷。
しかしエルガは、違った。
雨に濡れたら風邪を引くだろ、と彼は笑いながら言うけれど。
そんなところも含めて、私はエルガが好きだった。
確か、前に入ったのは一週間ほど前だろうか。
髪に触ると、汚れの落ちた本来の碧色が輝いた。
鏡に映る、自分の姿。
…嫌気が、さす。
美しい容姿など、いらない。
鏡から目を逸らし、先程のルトとの会話を思い出した。
ルトは、明るい。
もとからあまり喋るのが得意でない私は、もちろん進んで会話をすることはない。
しかしルトは、ぺらぺらこそ喋らないものの、私が上手く話せなくても気にせず話を振ってくる。
その会話の中で、ひとつ疑問に思っていた、ルトの歳を尋ねた。