月夜の翡翠と貴方


当たり前である。

一介の召し使いである私に、大切な客人を任せるなど、簡単に許せることではない。

「む…無理だよ。私だって、ロディー様と話したことすらないのに。私じゃなくて、ルトじゃダメなの?」

「こーゆーのは、明らかに女のほうが、ロディー様も遠慮するだろ」

「……でも……………」

私では、荷が重すぎる。


しかし何を思ったのか、突然セルシアが「お願いできませんか」と言い出した。

「な………セルシア様!?」

「確かに、難しいとは思います。けれど、もう私ひとりでは、あの方と話せそうにありません。少し、私の思いを代弁して下さるだけで良いのです」

そんな。

セルシアの気持ちの代弁は、難しくはない。

しかし、相手は上級貴族だ。

召し使いの言葉など、耳を傾けるかどうかさえもわからない。

「…………けれど……」

承諾できないでいると、ルトが突然「ジェイド」と呼んだ。


「……命令」


………ここで、それを使うのか。

「...なかなかひどいことするね」

「いいだろ、俺の勝手」

「………………」

最初に友人だと言ったのは、どの口だ。


< 515 / 710 >

この作品をシェア

pagetop