月夜の翡翠と貴方
当たり前である。
一介の召し使いである私に、大切な客人を任せるなど、簡単に許せることではない。
「む…無理だよ。私だって、ロディー様と話したことすらないのに。私じゃなくて、ルトじゃダメなの?」
「こーゆーのは、明らかに女のほうが、ロディー様も遠慮するだろ」
「……でも……………」
私では、荷が重すぎる。
しかし何を思ったのか、突然セルシアが「お願いできませんか」と言い出した。
「な………セルシア様!?」
「確かに、難しいとは思います。けれど、もう私ひとりでは、あの方と話せそうにありません。少し、私の思いを代弁して下さるだけで良いのです」
そんな。
セルシアの気持ちの代弁は、難しくはない。
しかし、相手は上級貴族だ。
召し使いの言葉など、耳を傾けるかどうかさえもわからない。
「…………けれど……」
承諾できないでいると、ルトが突然「ジェイド」と呼んだ。
「……命令」
………ここで、それを使うのか。
「...なかなかひどいことするね」
「いいだろ、俺の勝手」
「………………」
最初に友人だと言ったのは、どの口だ。