月夜の翡翠と貴方

私はひとつため息をつくと、「わかりました」と言った。


「しかし、何があっても知りませんよ」


一応言っておくと、セルシアは「いいえ」と唇を噛んでこちらを見つめた。


「情けなくも、頼っているのは私です。こちらが一切の責任を負いますわ」


…どうやら、もう無理らしい。


「………私の話がうまくいったら、セルシア様、きちんとロディー様とお話をされて下さいね」

「もちろんですわ」


…正直、うまくいく自信など全くないのだが。

するとそこで、ルトが「あ」と中庭の向こうを見つめて呟いた。


「…ロディー様、向こうにいるよ。多分セルシア様を、探しにきたんじゃない」

「え………」


セルシアが、困惑した表情をする。

するとルトが、ぱしっと彼女の手を掴んだ。

「…じゃあ、俺らはこの辺りで様子みとくから。ジェイド、いって来い」

言うが早いか、近くの物陰に隠れる。

「えっ……………」

向こうを見ると、段々とロディーがこちらへ近づいてくるのがわかった。


< 516 / 710 >

この作品をシェア

pagetop