月夜の翡翠と貴方
「実は……セルシア様のことで」
ジェイドがそう言うと、ロディーはフ、と笑った。
「…そうだろうな」
…ジェイドに、この命令は酷だっただろうか。
もう関わりたくないと考えているのに、貴族の男と話せというのは、彼女にとってかなりきついことではないだろうか。
月の光が髪に反射して、ジェイドの碧が淡く光る。
「申し訳ありません、ロディー様。代わりに、私がセルシア様のお気持ちをお伝えすることを、お許し下さいませ」
淑やかで、美しい。
声には凛とした響きがあって、振る舞いには上品さがあって。
俺の目から見ても、今のジェイドは、奴隷どころか、召し使いにも見えない。
ロディーは、少しの間頭を下げたジェイドを見つめ、やがて目を細めた。
「…いいだろう」
ジェイドが、「ありがとうございます」と深々と頭を下げる。