月夜の翡翠と貴方


「そして、君は俺に言ったんだ。『そんな顔をなさらずに、笑ってくださいな』と」


セルシアは、嗚咽を漏らして泣いていた。

思い出しているのだろう。


「君の笑顔は、今でも思い出せるよ。あとからそれが君だったと知って、俺がどれ程嬉しかったかわかるか。この娘を妻にしたい、と心から思った」


ロディーの顔は、これ以上ないくらいに、赤くなっていた。

…この男は、ただただ不器用なだけだったようだ。

愛情表現の仕方が、下手なだけで。

セルシアは泣きながら、「じゃあ」と震える声を出した。


「もう一度….はじめからしませんか。ふたりでもっと話しましょう。たくさんたくさんお話しましょう」


ロディーはきつく目を閉じて、「…ああ」と返事をする。


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