月夜の翡翠と貴方
そうして、夜会が終わって、真夜中。
コンコン、と扉を叩く。
「リロザさん」
扉越しに呼ぶと、すぐに扉は開けられた。
「来てくれてありがとう」
「いえ、こちらこそありがとうございます」
就寝用の衣服に身を包むリロザは、私の後ろにいる彼に気づくと、その存在を睨んだ。
「ジェイドさんだけで良いと言ったのに」
「そんなん許すかよ」
ルトは「残念でしたー」と舌を出すと、遠慮なくリロザが借りた部屋へ入っていった。
「…あんなのとふたりで旅をしていて、疲れないのか?私は絶対に耐えられない」
こんな分厚いのよく読めるなー、などといいながら、ルトが机に置かれた厚い本のページをぺらぺらとめくる。
そんなルトを、リロザは溜息をつきながら見ている。