月夜の翡翠と貴方
暗闇、絡められた、貴方がいる
「……ル、ルト」
おずおずといった様子で、私は浴場の扉を開けた。
壁に寄りかかって目を閉じたルトが、私を待っているのが見える。
呼ぶと、彼はその深緑の瞳を静かに開けて、こちらを向いた。
「………おー、いいじゃん。その色で正解だったな」
私の姿をまじまじと見つめたあと、彼は顔を明るくしてそう言うのだけれど。
…正直、恥ずかしい。
自分の身体を包む布地を、私はなんとも言えない気持ちで眺めた。
用意された、この服。
もともと着ていた服と同じ麻で、フードがついている。
長袖のワンピースのようになっていて、形は前のそれとほとんど変わらない。
ほぼ無地で、装飾といえば裾の近くに花の刺繍がついているだけ。
もちろん買ってもらったものに文句をつける気はないけれど。
私にはどうしても、その色が慣れなかった。
…白。
真っ白である。