月夜の翡翠と貴方


「…私達の結婚は、もう少し後にしますわ。はじめから、もう一度ふたりで頑張ります。ディアフィーネの復興のために」


そう言うセルシアの瞳には、強い決意に溢れていた。

セルシアは領主の娘として、申し分ないだろう。

この村をもう二度と訪れないかもしれないことが、残念だ。

…いや、この村の奴隷屋に売られればいいのだろうか。

しかし、その奴隷屋ももうすぐセルシアによって撤去されるのだろうから、考えないようにしよう。

ふたりが和解して、本当によかった。

きっとロディーと共に、互いの家と領地を、よりよくしていくだろう。



「じゃ」

ルトの挨拶で、手を振るセルシアに見送られながら、私達は村をあとにした。







「……いつまで続くんだよ…」


空が、茜色に染まる頃。

私とルトは、村を出て直ぐの森を、延々と彷徨っていた。

「……長いね、この森」

朝早くに出発したというのに、何故夕暮れ時になっても、まだ私達は森のなかにいるのか。



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