月夜の翡翠と貴方
「…私達の結婚は、もう少し後にしますわ。はじめから、もう一度ふたりで頑張ります。ディアフィーネの復興のために」
そう言うセルシアの瞳には、強い決意に溢れていた。
セルシアは領主の娘として、申し分ないだろう。
この村をもう二度と訪れないかもしれないことが、残念だ。
…いや、この村の奴隷屋に売られればいいのだろうか。
しかし、その奴隷屋ももうすぐセルシアによって撤去されるのだろうから、考えないようにしよう。
ふたりが和解して、本当によかった。
きっとロディーと共に、互いの家と領地を、よりよくしていくだろう。
「じゃ」
ルトの挨拶で、手を振るセルシアに見送られながら、私達は村をあとにした。
*
「……いつまで続くんだよ…」
空が、茜色に染まる頃。
私とルトは、村を出て直ぐの森を、延々と彷徨っていた。
「……長いね、この森」
朝早くに出発したというのに、何故夕暮れ時になっても、まだ私達は森のなかにいるのか。