月夜の翡翠と貴方


次の街まで遠い、とは言っていたが、まずその前に森を抜けるまでに時間がかかりそうだ。


「つーか、ここどこ…」


ルトは、地図を左に動かしたり逆さにしたりしている。

…現在地が、わからないらしい。

完全に、これは。


「…迷った?」


苦笑いを浮かべそう言うと、ルトは「いや、そんなはずは」などと言って、地図と戦い続けようとする。

意地でも認めたくないらしい。


「今日は野宿だね………」


ぽつりと言うと、ルトは地図から顔を上げ、いつまで続くのかわからない木々を見つめて「そうだな…」と気の遠そうな目をした。






ルトがテントを張り、その中へ入る。

動くと危ない時間帯になるまでは歩き続けたが、結局辺りの風景は何ひとつ変わらなかった。


群青のテントの中はやはり狭くて、ルトと肩がぶつかる。

「これで俺の背がもーちょっと高かったら、ふたりなんか入んないだろうな」

けど背は欲しいなぁ、と隣から笑い声がする。


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