月夜の翡翠と貴方
次の街まで遠い、とは言っていたが、まずその前に森を抜けるまでに時間がかかりそうだ。
「つーか、ここどこ…」
ルトは、地図を左に動かしたり逆さにしたりしている。
…現在地が、わからないらしい。
完全に、これは。
「…迷った?」
苦笑いを浮かべそう言うと、ルトは「いや、そんなはずは」などと言って、地図と戦い続けようとする。
意地でも認めたくないらしい。
「今日は野宿だね………」
ぽつりと言うと、ルトは地図から顔を上げ、いつまで続くのかわからない木々を見つめて「そうだな…」と気の遠そうな目をした。
*
ルトがテントを張り、その中へ入る。
動くと危ない時間帯になるまでは歩き続けたが、結局辺りの風景は何ひとつ変わらなかった。
群青のテントの中はやはり狭くて、ルトと肩がぶつかる。
「これで俺の背がもーちょっと高かったら、ふたりなんか入んないだろうな」
けど背は欲しいなぁ、と隣から笑い声がする。