月夜の翡翠と貴方
「どうして、この色………?」
「暗い色だと、街とか行ったとき逆に怪しいだろ。俺も連れにくいし、夜もわかりやすいし。何より、お前の髪の色に合ってる」
細められた目に、私はなんとなく目線を逸らす。
…この男なりに、随分と考えてくれたようだ。
もやもやとしながらも、私は意外にも地味なデザインに驚いていた。
もう少し、派手なものを選んでくると思っていたのに。
「……シンプル、だね」
視線を、まだなんの汚れもついていない真新しい白へ向けながら、呟くように言う。
…ほんの少しの沈黙のあとに、私は目を見開いた。
「…あんまり派手なのは、お前が嫌だろ?」
ぱっと上を向くと、ルトの間抜け顔が見える。
…それは、目立つ服は私が嫌がると、わかっていたということか。
あまりに驚いて、私はルトを見つめ続けた。
彼はぎこちなく、私の髪を指差して。