月夜の翡翠と貴方
「女を逃がすな!」
振り返らず、私は真っ暗な森の中へと走った。
*
シュッ…………
「……っは…っ……」
息が、上がる。
ガギィン!
脚を動かせば、短剣が向かってくる。
「……っ……チッ……」
思わず舌打ちするが、それさえも舌を噛みそうになった。
「…大丈夫か?友人どの」
上がる息のなかで睨むように上を見ると、少し息を乱しながら、レグートがこちらをニヤ、と笑ってくるのが見える。
そっちには喋る余裕があるんだろーが、生憎こっちにそんな余裕なんかない。
お前ら七人をジェイドのほうへ向かわせないだけで、こっちはもう精一杯なんだよ。
しかも、こいつら相当手加減してる。
本気で全員で向かってくれば、俺なんかすぐに殺せるのに。
ガン!という、一際大きな音がして。
ドサッと、身体が地面に打ち付けられる。
はぁ、はぁ、と懸命に呼吸をする。