月夜の翡翠と貴方


「女を逃がすな!」


振り返らず、私は真っ暗な森の中へと走った。






シュッ…………


「……っは…っ……」

息が、上がる。

ガギィン!

脚を動かせば、短剣が向かってくる。

「……っ……チッ……」

思わず舌打ちするが、それさえも舌を噛みそうになった。


「…大丈夫か?友人どの」

上がる息のなかで睨むように上を見ると、少し息を乱しながら、レグートがこちらをニヤ、と笑ってくるのが見える。

そっちには喋る余裕があるんだろーが、生憎こっちにそんな余裕なんかない。

お前ら七人をジェイドのほうへ向かわせないだけで、こっちはもう精一杯なんだよ。

しかも、こいつら相当手加減してる。

本気で全員で向かってくれば、俺なんかすぐに殺せるのに。


ガン!という、一際大きな音がして。

ドサッと、身体が地面に打ち付けられる。


はぁ、はぁ、と懸命に呼吸をする。



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