月夜の翡翠と貴方
道なりがよくわからなくて、ひたすらに走ったら、そこはー…
「…………嘘……」
ー…崖…だった。
木々がない場所に出たと思ったら、崖。
しかも、水の音がする辺り、下には川が流れているらしい。
月の光が照らしてくれているから、なんとかこの場にとどまっていられるものの。
もし辺りが暗いままだったら、私は危うく崖から転落しているところだった。
「…………」
後ろを振り返り、真っ暗な木々の奥を見つめる。
…このまま引き返しても、きっとルトのもとへは戻れないだろう。
果たして、無事だろうか。
いくら身のこなしが軽いからといって、あの人数をひとりで相手にするのは………
ぎゅ、と手のひらを握りしめる。
………もう、ルトと会うことも出来ないのかもしれない。
レグート達が私を追ってこないということは、足止めできているということなのだろうか。
いろんな不安が、ぐるぐると頭を駆け巡る。
ああ、油断していた。
レグート達はきっと、知っていたのだ。