月夜の翡翠と貴方
この森を一日で抜けるのが、難しいことを。
だから、夜を狙ったのだ。
悔しさに、思わず唇を噛む。
そこで、森の奥から声がした。
「…ジェイド!」
ー…この声は…!
「ルト!ルト!」
木々の向こうにいるであろう、主人に叫ぶ。
「…ジェ…」
やがてガサガサ、と音がして。
そうして木々の間から見えたのは、愛おしい主人の姿だった。
「…よかった……………」
安堵の表情を浮かべながら、こちらへ来てくれる。
それは、こちらの台詞だ。
無事でいてくれた。
見ると、至る所に傷があり、服も砂だらけだった。
その片手には、剣がある。
「…はぁ………さすがにあの人数は無理だったから、逃げて来た」
…逃げてこれるだけ、すごいと思うが…
ルトはジャキ、と剣の音を鳴らすと、森の奥を見据えた。