月夜の翡翠と貴方
「…たぶん、追って来てる。俺を」
「……………!」
ルトは崖を見つめて、苦い顔をした。
「…まずいな」
来て、とルトが私の手を掴んだ、そのとき。
「そうはいかない」
ガサ、と音がして、何人も男が木々の向こうから姿を現した。
…ああ、そんな。
「友人どのは、逃げ足が早い」
「…どうも」
今にも舌打ちをしそうな顔をして、ルトはレグートを睨む。
レグートは一歩、こちらへ歩み寄った。
私達も、後ろへ下がる。
「…いい加減諦めたほうが、あなた達にも得策だろう」
ニヤ、と笑って、こちらへ来る。
「友人どのは、生かしてやる。その代わり、マリアを渡してくれ」
「嫌だって何度言ったらわかるんだよ」
ルトは私の前に立って、剣を握りしめる。
レグートは目を細め、ルトの後ろにいる私を見つめた。
「…あなたは、やはり守られてばかりだな」
…………ああ。
それは、そうだ。