月夜の翡翠と貴方
家族みんな私を大事にしてくれて、ルトの憶測がもし本当だとしたら、私は最後まで守ってもらったことになる。
そして、今も、ルトに守られている。
「…そうだね。私は無力だと思う」
ルトは、レグートに言葉を返した私に、驚いているようだった。
「…わかっているのなら、いつまでも友人どのに迷惑をかける前に、こちらに来た方が良い」
レグートにとっては、雇い主から私を連れてくるよう言われているのだから、きっと必死なのだろう。
「…俺は迷惑とか思ってない」
「今はな。そのうち疲れてくるよ」
…わかっている。
そんなことは、とっくに。
少しずつ距離を詰めて、確実に、レグートが迫ってくる。
崖が、近い。
「…償いでも、なんでもする。でも、今は駄目」
…ルトが、困るから。
そう心の中で呟いた言葉は、きっとルトにも伝わっただろう。
やっぱり、驚いた顔をしてる。
…ちゃんとわかってるから、大丈夫だよ。
「忘れようなんて、思ってない。両親を恨んでもない。私はやっぱりリズパナリの娘で、マリアなのは変わらないから」
レグートが静かにこちらを見据える。