月夜の翡翠と貴方


男達が、一気にこちらへ迫ってくる。

「…っジェイド」

後ろはもう、崖だ。

水の音が、煩く聞こえてくる。


「マリアを捕まえろ!」


レグートが叫んで、男達が私に向かってくる。

彼らの手が、私へ伸びてくる。

「…………っ」

カララ…と足元の石が、崖の下へ落ちていった。

息を飲んで目をつむった、そのとき。


ガァン!


大きな金属音がした。

剣が、宙を舞う。

…ルトの剣だ。

それを目に映した瞬間。


ー…耳元で、ルトの舌打ちが聞こえた。


「………!マリア!!」


ルトが私を抱きしめる。

そして、驚いた顔をしたレグート達の姿が、遠くに見えた。

…足が、浮く。

視界が木々を映す。真横でルトの茶髪が揺れる。


私とルトは、真っ暗な崖の下へと、落ちていった。








バシャッ…………


「…はっ…ジェイドっ」

水面から顔を上げて、かろうじて水に濡れたルトを目に映す。


< 550 / 710 >

この作品をシェア

pagetop