月夜の翡翠と貴方
男達が、一気にこちらへ迫ってくる。
「…っジェイド」
後ろはもう、崖だ。
水の音が、煩く聞こえてくる。
「マリアを捕まえろ!」
レグートが叫んで、男達が私に向かってくる。
彼らの手が、私へ伸びてくる。
「…………っ」
カララ…と足元の石が、崖の下へ落ちていった。
息を飲んで目をつむった、そのとき。
ガァン!
大きな金属音がした。
剣が、宙を舞う。
…ルトの剣だ。
それを目に映した瞬間。
ー…耳元で、ルトの舌打ちが聞こえた。
「………!マリア!!」
ルトが私を抱きしめる。
そして、驚いた顔をしたレグート達の姿が、遠くに見えた。
…足が、浮く。
視界が木々を映す。真横でルトの茶髪が揺れる。
私とルトは、真っ暗な崖の下へと、落ちていった。
*
バシャッ…………
「…はっ…ジェイドっ」
水面から顔を上げて、かろうじて水に濡れたルトを目に映す。