月夜の翡翠と貴方


「…洞穴…今日は、ここで寝るか」


月明かりが、ちょうど良くこの空間に差していた。

レグート達も、さすがに追ってくる気配もない。

「…けど、こっからどうするかなー…」

ルトが困った、という顔をする。

さらさらと流れる川を見ると、すぐ近くに、道らしいものが見えた。

「あ…あれ………………」

指差したところには、崖に沿って狭いものの人ひとりは通れるだけの道が作られている。


この道も洞穴も、なんの目的で作られたのかわからないが、幸運この上ない。

「道あるじゃん…よかったぁ…」


はぁー、とルトがため息をつく。

あとはこの道が、どこかへ通じているのを願うだけだ。


洞穴の奥に入って、ふたりで座り込んで息をつく。

荷物は全て濡れ、テントは先ほどルトが破ってしまったために、非常に心もとない。

濡れた身体が、ぶる、と震えた。


「…………寒い?」


ルトが、心配そうな目で見てくる。

「…大丈夫。平気」

これ以上、ルトに迷惑はかけられない。


< 552 / 710 >

この作品をシェア

pagetop