月夜の翡翠と貴方
「…洞穴…今日は、ここで寝るか」
月明かりが、ちょうど良くこの空間に差していた。
レグート達も、さすがに追ってくる気配もない。
「…けど、こっからどうするかなー…」
ルトが困った、という顔をする。
さらさらと流れる川を見ると、すぐ近くに、道らしいものが見えた。
「あ…あれ………………」
指差したところには、崖に沿って狭いものの人ひとりは通れるだけの道が作られている。
この道も洞穴も、なんの目的で作られたのかわからないが、幸運この上ない。
「道あるじゃん…よかったぁ…」
はぁー、とルトがため息をつく。
あとはこの道が、どこかへ通じているのを願うだけだ。
洞穴の奥に入って、ふたりで座り込んで息をつく。
荷物は全て濡れ、テントは先ほどルトが破ってしまったために、非常に心もとない。
濡れた身体が、ぶる、と震えた。
「…………寒い?」
ルトが、心配そうな目で見てくる。
「…大丈夫。平気」
これ以上、ルトに迷惑はかけられない。