月夜の翡翠と貴方
けれどルトは、やはり意思の読み取れない笑みを浮かべるだけで。
そして、益々驚くことを言った。
「…俺が、お前の知らないとこに、お前を連れていく、って言ったら?」
…言葉が出てこない。
どうしたの、ルト。
どうしてそんなこと言うの。
「……え…と…」
知らなかった、と言えば、嘘になる。
なんとなくわかっていたことではあった。
動揺が隠せない私を見て、ルトは目を細めて。
私の頬に触れる手を、離した。
「…俺のこと、嫌いになる?」
…え…?
意味がわからない、と言う顔をすると、ルトは可笑しそうに笑う。
「…ここでお前を俺から離してやったほうが、いいんだろうな」
私は、反射的に離れていくその手を掴んだ。
驚くルトの手を、震える手で包む。
「……な、らない…よ」
嫌いになんか。
「…ならないよ………………」
震える声で言うと、ルトは苦しそうに笑った。