月夜の翡翠と貴方
けれど、なんだか喉が渇いた。
川の水を飲もうと思い、試しに少し動いてみる。
すると、動くなとでもいうように、ぎゅう、と抱きしめられた。
「…!?」
起きているのかと思い上を見上げるが、先程と変わらぬ寝顔が見えるだけである。
「…………………」
かぁぁ、と顔が熱くなってくる。
なんなんだこの男。
どういうつもりなんだ。
そもそも人を抱きしめたまま寝るなんてどうかしている。
…いや、お互い寒かったのだから、仕方ないのかもしれないが。
しかし、私も何故か普通に寝てしまったのだから、あまり人のことはとやかく言えない。
そこまで考えて、昨日の自分を思い出し、もっと恥ずかしくなった。
あんな失敗は繰り返さない、と誓ったというのに。
止まらなかった。
手を掴まないと、もう二度と触れられない気がした。
だって、だって。
昨日のルトは、どこか自嘲気味というか、なんだか悲しそうだったから。
突然あんなことを言い出すのだから、ルトにも何か思うところがあったのだろうか。