月夜の翡翠と貴方
「名前、呼んで」
声が震える。
離れなければ、いけないとわかっているなら。
せめて、どうか。
目を見開くルトを、見つめる。
どうか最後の一瞬まで、ルトの声で、私を呼んで。
ルトは少しの間私を見つめたあと、静かに唇を開いた。
「……………ジェイド」
好き。
ルトの声が、好き。
「…もっかい」
「ジェイド」
「もっかい…」
「ジェイド…ジェイド」
涙が出そうになる。
ルトがくれた名前は、こんな私には綺麗すぎて、似合わないと思う。
けれど、ルトが綺麗と言ってくれるなら。
私は…それを、嬉しいと思える。
ルトがくれた名前を、誇りに思うことができる。
瞳に涙を溜める私を見て、彼は少し苦しそうだった。
子供をあやすみたいに、頭を優しく撫でてくる。
「…ひとつしか、歳変わらないのに」
「ジェイドは変なとこで子供みたいになるんだよ」
頭上から聞こえる、微かな笑い声。