月夜の翡翠と貴方
…ルトにこの名前をもらってから、何度呼ばれただろうか。
きっともう、数えきれないくらい。
ルトは立ち上がり、私の手を掴むと、「テント買いに行こう」と言った。
「破いちゃったし、今日は多分野宿だし」
向こうでテントを売ってる店を見つけた、と言って、私の手を引っ張る。
ルトの笑顔が、目に映る。
狂おしいほどの愛しさを、胸にしまいこんで。
私は、笑った。
*
群青がいい、という私の希望を快く受け取ってくれたルトは、前のテントに近い色を買ってくれた。
「落ち着くの」
テントのなかで、差し込む月明かりを見つめる。
新しく買ったものは、前のものより少し大きい。
肩は相変わらずぶつかるが、少し余裕ができた。
「俺も、この色がいちばん見慣れてるかな」
寝そべったルトが、座っている私に笑う。