月夜の翡翠と貴方
別れ、目的、檻のなか
「多分、今日の昼頃着くよ」
ルトの口から初めて目的地のことを言われたのは、翌日の朝だった。
「……………」
今日の、昼…
突然のことに、頭がついていかない。
「……………わかった…」
そして驚くほど、ルトがいつも通りで。
朝食はテントの外で、昨日関所で買ったものを食べた。
そのときもやはり、ルトは普通で。
今日は少し暑いだとか、この干しぶどうはおいしいだとか。
全部、耳に残っているけれど、返事はろくに返せなかった気がする。
「行くか」
テントをたたむと、ルトは通りに出て歩き始めた。
「…………」
いつもはここで、手を掴まれるのに。
違ったのは、手を繋がないことだった。