月夜の翡翠と貴方
「昼頃には着くから、昼食はいいか。真っ直ぐ行こ」
「…………え、ああ、うん」
思わず返事が遅れる。
…先程の朝食が、ルトとの最後の食事だったのか。
胸の動悸が、少し激しくなってきた。
…落ち着かないと。
わかっていたことなのに。
別れは近い、と。
…いや、まさか今日だとは思っていなかったが。
ルトに気づかれないよう、小さく深呼吸をする。
…目的地のことを、突然今日の朝言ったのは、きっとわざとだ。
早いうちから言って、気まずくなるのを避けたのだろう。
ルトなりの優しさ。
なのに、それを素直に受け止められない私がいる。
駄目だ。決めたじゃないか。
離れるときは、惨めな奴隷になるのだ、と。
ルトに迷惑はかけない。
そう…決めたのに。
どうして、こんなにも。
息をするのさえ、苦しいのだろう。