月夜の翡翠と貴方


「ではシズどの、ご苦労だった。また明日」


マテンが、私の手を引いて、邸のなかへと入っていく。

…ルト。

ルト、ルト。

ルト!

声を出したくても、出せない。


振り返ると、見えた主人の姿は、無表情で。

暗い深緑を下へ向けて、その場に立っていた。





ここは、どこだろう。

床の冷たさと、背中の痛みで目を開ける。


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