月夜の翡翠と貴方


「…………愛しい愛しい、私の奴隷よ」


マテンが、目を細めて、こちらを見る。

私はフードの隙間から目を動かして、マテンを睨んだ。


「…良い目だ…素晴らしい。これこそ、この私マテン・カナイリーの一品目のコレクションに相応しい」


…マテン・カナイリー。

どこかで聞いた名だ、と思っていた。

ああ…思い出した。

幼少の頃に、貴族令嬢の友人に、話を聞いたことがある。

なんでも、カナイリー家の長男は、貴族のなかでも有名なコレクターで。

絵画や花瓶、宝石やドレス…

美しいものを集めるのが、趣味なのだと。

しかし、そのコレクションに、何故私が必要なのか。

私はよた、と身体を起こすと、「マテン様」とか細い声を出した。


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