月夜の翡翠と貴方
空間、欲しいもの、狂おしさの片隅で
最初は、ただの依頼品だった。
奴隷と接するなんてはじめてだったから。
とりあえず固いかんじが嫌で、
呼び捨てにさせて敬語はやめさせた。
平民の下である奴隷には厳しくする、なんて器用な性格でもなかったから、
『友人』という立場を無理矢理つくった。
…多分、それがまずかった。
話してみれば、平民と変わらない普通の少女で。
…少し表情の変化が乏しいくらいで、普通の、実に普通の少女だった。
仏頂面して、意外とよく泣く。
ときどき、とても優しく笑う。
突然、目を見開くような行動をする。
…本人も驚いた顔をしていたから、きっとほぼ衝動的なんだろうけれど。
真が強い女だと思ったら、
変なところで脆く、儚い。
放っておけなくなって、
触れたくなって、
離したくなくなって。