月夜の翡翠と貴方
やがて彼女の全てに魅せられて、
おかしくなって。
駄目だと制する自分と、
欲に負ける自分がいる。
なんとか、境界線を超えてしまうまで触れることだけは避けて。
唯一残った理性が、
溺れるのはこちらだ、と語りかけていた。
*
朝日が眩しい。
見慣れた群青のテントから、日光が降り注ぐ。
うっすらと目を開け、起き上がる。
意外だと言われるほどには、早起きである。
隣でまだ寝ているであろう少女を起こすのが、毎朝の日課だった。
今日も、ふらふらと曖昧な意識を彷徨いながら、自らがつけた名前を呼んだ。
「……ジェイド。朝………」
…言いかけて、目を見開いた。
何故かぽっかりと空いたような空間を、呆然と見つめる。