月夜の翡翠と貴方


やがて彼女の全てに魅せられて、

おかしくなって。


駄目だと制する自分と、

欲に負ける自分がいる。


なんとか、境界線を超えてしまうまで触れることだけは避けて。

唯一残った理性が、


溺れるのはこちらだ、と語りかけていた。








朝日が眩しい。

見慣れた群青のテントから、日光が降り注ぐ。

うっすらと目を開け、起き上がる。


意外だと言われるほどには、早起きである。

隣でまだ寝ているであろう少女を起こすのが、毎朝の日課だった。


今日も、ふらふらと曖昧な意識を彷徨いながら、自らがつけた名前を呼んだ。


「……ジェイド。朝………」


…言いかけて、目を見開いた。

何故かぽっかりと空いたような空間を、呆然と見つめる。


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