月夜の翡翠と貴方


ガサ、と近くから葉のこすれる音がして、ばっとそちらへ振り返った。

見えたのは、に、と笑って、こちらを見つめる女。


「………ミラゼ…」


そこにいたのは、数少ない信頼のおける幼馴染…だった。

ミラゼは茜のポニーテールを揺らして、こちらを見ている。

「なんで、いるんだよ…」

ミューザにいるはずの、ミラゼが。

彼女は意味深に微笑むと、「あんたを助けに来たのよ」と笑った。


「…は?」

助け?

「冗談よ。依頼実行のためにね」

…ミラゼの、依頼?


「依頼のついでに、哀れな幼馴染を助けてやろうかと思って」


…意味がわからない。

「お前の依頼のついでに、俺の何を助けるんだよ…」

「欲しいものがあるんでしょう」

その言葉に、目を見開く。

…どういう意味で、言ってんの?


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