月夜の翡翠と貴方


ミラゼはまるで、全てをわかっているような笑みを向けてくる。

…まさか。


「…私の依頼のためにも、協力してくれる?ルト」


…一体、何を企んでいるのか。

この女の何かを含んだ笑みが、最も恐ろしい。


俺が「…なに?」と訊くのと、ミラゼが満面の笑みを見せるのは、ほぼ同時だった。







「…大丈夫ですか?」


先程着替えを行った部屋に戻ると、召使いの男は心配そうに私の顔を見た。

フードをとった私の顔を見て、男は益々眉を下げる。


「…大丈夫です、ありがとうございます」


ず、と鼻をすする。

…この男が、奴隷に対して厳しい人間でなくてよかった。

彼のお陰でだいぶ落ち着くことができたが、気を抜くとまた涙が出そうになる。


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