月夜の翡翠と貴方
ミラゼはまるで、全てをわかっているような笑みを向けてくる。
…まさか。
「…私の依頼のためにも、協力してくれる?ルト」
…一体、何を企んでいるのか。
この女の何かを含んだ笑みが、最も恐ろしい。
俺が「…なに?」と訊くのと、ミラゼが満面の笑みを見せるのは、ほぼ同時だった。
*
「…大丈夫ですか?」
先程着替えを行った部屋に戻ると、召使いの男は心配そうに私の顔を見た。
フードをとった私の顔を見て、男は益々眉を下げる。
「…大丈夫です、ありがとうございます」
ず、と鼻をすする。
…この男が、奴隷に対して厳しい人間でなくてよかった。
彼のお陰でだいぶ落ち着くことができたが、気を抜くとまた涙が出そうになる。