月夜の翡翠と貴方
叫び、刻まれたもの、『私を忘れないで』
捕らえられたら、
諦める。
無駄な抵抗などしないし、逃げようと企てもしない。
ただ、生きていく。
それだけのために、耐える。
それが『私』だった。
けれど、夢のなかでナタナが言った。
『今も、それができるのか?』
自分の頬に、手を当てる。
濡れていた。
涙のあとがある。
何故?
ナタナの邸でも、泣いたことなどなかったのに。
あの人に会ってから、私は泣いてばかりだ。
感情が溢れ出すのを、止めることができない。
耐えていれば、落胆して苦しくなることもないのに。