月夜の翡翠と貴方
…大切な、もの。
私は麻の服を見つめ、目を細めた。
「…………はい」
その表現が、正しいのかは、わからないけれど。
「…シズ様から、贈られたものですか?」
「…はい」
ルトに、寄せてはならない想いを抱いていることが、わかってしまっただろうか。
少し反応を見るのが怖かったが、男は変わらない笑みを浮かべていた。
「…そうなのですね」
そして、また目を伏せて黙る。
…おかしい、と思われたかもしれない。
それでも、もうなんでもいいと思った。
おかしいと思われたって、構わない。
私にだって、よくわかっていないのだから。
ただただ、絶え間無く激情が襲ってくるだけ。
この服に触れていると、いろんな思い出が蘇ってくる。
それと同時に、ルトの優しさを思い出して。