月夜の翡翠と貴方


「………………」


しかし男は、なかなか扉を開けない。

「…?」

不思議に思い見上げると、男と目が合う。

彼は、少し強い声色で、「ジェイドさん」と言った。



「…『困ったとき』は、ろうそくの横を見て下さい」



「………え?」

ろうそくの、横…?

意味がわからない、という顔をすると、男はふ、と笑った。


「それと、廊下では、必ず左角を曲がってください」


…………?

今度こそ、本当に意味がわからない。

なんの話だ?

眉を寄せて男を見つめる。

けれど、何も言ってくれない。


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