月夜の翡翠と貴方


そして彼は最後に、こう言った。

私を、優しく見つめて。



「…どうか、諦めないで下さい。欲しいものを、手に入れることを」



私は、目を見開く。

彼は扉をノックする。


「連れて参りました」


その声と共に、私は足を踏み出した。








パタン…

少女の碧の髪が、視界から消えていく。

目の前で、扉が閉まる。



「…さてと」

男はふぅ、とため息をつくと、螺旋階段を上がり始めた。

もう一仕事。

もうすぐ、終わる。


あとは、少女がどうするか、だ。


まず、『彼女』に報告に行かなければ。

召使いとして彼女に会うのは、だいぶ苦労する。



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