月夜の翡翠と貴方


頃合いを見計らって邸から抜け出すのは、大変なスリルだ。


碧の少女は、だいぶ弱ってきていた。

自分の言葉がどう転ぶかはわからないが、こちら側としても、上手くいってもらわないと困る。


「…ろうそくに、気づいていただけると良いのですがね」


男は優しく微笑む。

左角を曲がる。


その笑みは、何かを含んでいるような、意味深なものだった。








最初に目に入ったのは、大きな大きな檻だった。

華やかな装飾が施され、布が上品に下げられている。

…そんな美しい雰囲気と、明らかに合っていない何本もの鎖が、部屋のあちこちから檻へと繋がれていた。



「待っていたよ、ジェイド」


豪華なソファーと、テーブル。

全体的に暗い部屋に浮かび上がる、棚に置かれた淡いランプ達。

テーブルの横にある、ベッド。


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