月夜の翡翠と貴方
頃合いを見計らって邸から抜け出すのは、大変なスリルだ。
碧の少女は、だいぶ弱ってきていた。
自分の言葉がどう転ぶかはわからないが、こちら側としても、上手くいってもらわないと困る。
「…ろうそくに、気づいていただけると良いのですがね」
男は優しく微笑む。
左角を曲がる。
その笑みは、何かを含んでいるような、意味深なものだった。
*
最初に目に入ったのは、大きな大きな檻だった。
華やかな装飾が施され、布が上品に下げられている。
…そんな美しい雰囲気と、明らかに合っていない何本もの鎖が、部屋のあちこちから檻へと繋がれていた。
「待っていたよ、ジェイド」
豪華なソファーと、テーブル。
全体的に暗い部屋に浮かび上がる、棚に置かれた淡いランプ達。
テーブルの横にある、ベッド。