月夜の翡翠と貴方
そもそも、『愛しいご主人様』なんて言ってしまったのが、私自身悪かったのかもしれない。
けれど、本当のこと。
ルトは意地悪そうに『誰のことですか?』なんて訊いてきて。
もう誰の事だか、わかっているようだった。
…そうだよ。
私が『愛しい』と想うのは、誰なのか。
貴方も、わかっているでしょう?
マテンはしばらく私を見つめ触れたあと、満足気に微笑んで、言った。
「…これだけでは、コレクションとは言えない。…さぁ、ジェイド。入ってもらおうかな」
その視線の先にあるのは、美麗な檻。
マテンは檻の前に立つと、キィ、とその扉を開いた。
「…さあ」
…あのなかに入れば、私はコレクションになる。
もう、逃げられない。
…わかっている。
いつもそう思って、抵抗することをやめていた。
無駄なことだから。
余計に、心身が疲れるばかりだから。