月夜の翡翠と貴方


「…私に愛でられ、誇るべき最期を迎えることができる。実に麗しい最期だ」

マテンの目が、うっとりと私を見つめる。

…最期、か。

ルトはきっと、すぐに忘れてしまうのだろう。

依頼品の、私のことなんて。

最期のそのときまで、私の中に僅かにでも『ルト』が残っていたら、いいけれど。


…ああ、でもなんだか、納得いかないな。

ルトは、いつも意地悪で。

馬鹿な男だと思ったら、容易く私に触れて妖しく微笑む。


…彼の表情が、すごく好き。


私と違って、色んな表情を見せてくれた。

明るい笑顔、妖艶な笑み。

悲しそうな深緑と、暗い暗い、獣のような深緑。

少し高くて柔らかい声と、低くて強く厳しい声。


そんな彼に、私はいつも振り回されてばかりだった。


…私の愛しいご主人様が誰かなんて、私も貴方もわかっている。

たったひとり。

たったひとりの、愛しい愛しいご主人様。


「…………ジェイド」


マテンの、低い声。

早く来なさい、という声。


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