月夜の翡翠と貴方


けれど私は、足を動かさない。

…だって、納得いかないもの。

いつもいつも、振り回されてばかりで。


マテンの、怒気を含んだ声がする。


「お前のような卑しい奴隷が、私のコレクションとなるのだ。なんの不満があるというのだ」


…生きることより、欲しいものを見つけたの。

けれどその欲しいものが、私は好きなのか嫌いなのかわからない。

けれどただただ、私を離さないで欲しかった。


…それだけ、だけれど。

「…ジェイド」

…違う。違う。

呼ばないで、呼ばないで。


混沌とした私の感情が、今にも溢れ出しそうで堪らなかった。


ぐちゃぐちゃな私のなかは、ルトで埋め尽くされていて。


納得いかない。

私はあんなにも振り回されて、今もこんなにおかしくなって。


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