月夜の翡翠と貴方
「お嬢ちゃん、君は綺麗だ。おじさん達と来ないかい?」
欲しいものをなんでもあげるよ、と言い、詰め寄ってくる。
…うる、さい。
お前たちの本心など、わかり切っていることだ。
私を、売り飛ばす気のくせに。
こういう目に遭うのは、今回が初めてではない。
息を荒くして見つめてくるその視線に、私は顔をしかめた。
気持ち悪い、から。
「…近づかないで…」
周りからの視線が、一層強くなった。
気まずそうに目線を逸らしながらも、やはり気になるのか、ちらちらとこちらを見てくる。
助けは愚か、ただただ好奇の目を向けてくるだけ。
わかっている。
……人間など、所詮そんなものだ。