月夜の翡翠と貴方
ここの主人は、つくづく趣味が悪い。
そんなことを思いながら、階段を駆け下りる。
…暗くて、なにも見えない。
この先に何があるのか、わからない。
「……………っ」
何もわからないまま、走る。
…もう、駄目なのだろうか。
不安になった、そのとき。
「…ジェイド」
………声が、した。
優しい、柔らかな声が。
聞き慣れたその声に、目を見開く。
立ち止まり、きょろきょろと周りを見渡した。
私は思うより先に、口を開く。
「…………ル、ト…?」
「はいよ」
トン、と目の前に何かが降り立った。