月夜の翡翠と貴方
甘く、全てを、私のご主人様
手を引かれて、暗闇を歩いていく。
進む足取りは迷いがなくて、そういえば前に夜目が利くとかなんとか聞いたか、なんて納得した。
後ろで男は暗闇を彷徨っているのか、もう声も何も聞こえてこない。
何故灯りがないのか、この状況はなんなのか。
頭がついて行かずに、別のことを考える余裕すら出てきた。
手を引く温もりが、信じられない。
何故、何故。
頭を駆け巡るのはそんなことで、目の前にいるはずの背中が、偽物なのではと思えてくる。
しかし、私の疑いだとかは、すぐになくなってしまった。
背中が突然立ち止まり、顔がぶつかる。
「ごめん」という優しい声が聞こえたと思えば、突然眩しい光が見えた。